トレジャーデータで実践:Path 分析(応用編,前編)実店舗における買い物回遊パス分析
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Armadillo-IoT がもたらす「お買い物革命」
前回のWebにおけるパス分析の応用として,実店舗におけるユーザーのお買い物時の回遊パスを分析する事例をご紹介します。
ところで,実店舗でのユーザーのトラッキングはどうするの?というのはずっと前から議論され続けていた課題です。
それに対する素晴らしいアプローチが、良品計画様が提供する「MUJI passport」アプリの事例です。スマートフォンから受け取ったクーポンを持って実店舗で買い物したユーザーが、レジで「MUJI passport」に表示されるバーコードを読み取ってもらうことでリアルとWebの会員情報を紐付けるのです。
もう一つの素晴らしいアプローチをご紹介します。Armadillo-IoT という、どこにでも置けるコンパクトなゲートウェイが実店舗内のユーザーの回遊情報を受信し、3G回線で発信してくれるのです。
2種類の「通信」端末
ここで2種類の端末が登場します。
Beacon
Beacon(ビーコン)は,省電力型の近距離通信(Blootooth LE)を使用してデータを発信する非常にコンパクトな端末です。
ボタン電池で長時間駆動するこのBeacon端末は、今やあらゆるところに潜んでおり、Beaconの発する電波を受信する受信機端末が近くに来るのを待っています。
受信機(ゲートウェイ)
Beacon からの電波を受信し、かつ自身に備わった通信回線を使用してインターネットにその情報を送信するのが受信機(ゲートウェイ)です。この受信機の一番身近な例は皆さんがお持ちの「スマートフォン」です。
スマートフォンは Blootooth を通じて Beacon からの電波を受信し、スマートフォンの回線を通じて位置情報などがアプリケーションサーバーへ送信されます。Beaconとユーザーの距離関係を読み取ったアプリケーションサーバーはクーポンなど何らかのプロモーションをスマートフォンへプッシュ通信することで、リアルとウェブの融合が起こります。
スマートフォンの事例では
- Beacon 端末が店舗内のあらゆる場所に設置されている
- 受信機(スマートフォン)は常に移動して近くのBeaconの電波を受け取る
という状態になっています。
さて、ここでの問題はユーザーがスマートフォンをBlootoothをONにして来てくれないとコミュニケーションが生じないということです。この場合はONにしている特定のユーザーの情報しか得ることができず、プロモーション情報のプッシュ通知は可能でも、それをもとにした分析を行うとなれば、データが偏っている可能性が高いでしょう。
Armadillo-IoT
Armadillo-IoT は、逆転の発想でユーザーの所有物(先ほどの例による「スマートフォン」)に依存しない形で、確実に実店舗でコミュニケーションを発信することを可能にしました。つまり、
- 受信機(Armadillo-IoT ゲートウェイ)が,店舗内のあらゆる場所に設置されている
- Beacon 端末が何らかの動くモノに埋め込まれて移動する
形を取るのです。以下のゲートウェイは、小型の3G回線機能を持った小さな端末です。
今回ご紹介する実店舗内での回遊については、あらゆる商品棚にこのゲートウェイが置かれ、買い物かごにBeaconを埋め込む事によって買い物をするユーザーの「お買い物パス」を記録することができるのです。
「トレジャーデータ社/株式会社アットマークテクノ IOT事業で協業 ビッグデータの解析が可能なIOTプラットフォームを提供開始」
Armadillo-IoTは、あらゆる「モノ」と「インターネット」をつなぐゲートウェイ(上図)を中心とした製品群です。
一方,トレジャーデータは Armadillo-IoT にインストールされたログ収集ツール「Fluentd」が Beacon からの情報を受け取り、Armadillo-IoT 本体の3G回線に載せてトレジャーデータサービスへ送信し、データが蓄積されていきます。
この2社の強力な連携によって、トレジャーデータとArmadillo共同のIoT体系が生まれます。
設定
まずは、実店舗におけるお買い物回遊パスを取得するための設定をご紹介します。
- 店舗内の10箇所に受信機を設置。受信機1〜9は等間隔に配置されている。
- 受信機8をレジであると仮定する。
- かご置き場は店舗の出口に置かれ、受信機10とする。
- 各々の受信機の位置にキャンペーン商品を設置。(受信機と商品が1対1に対応)
- 各々の買い物かごにBeaconを設置。(買い物かごとBeaconが1対1に対応)
- 店舗を訪れたユーザーの、レジ精算して買い物かごを置き場にしまうまでの一連の買い回り行動を一つのパスとみなす。
まずこの設定の良い所は、ユーザーではなく、買い物かごにBeaconを埋め込んだところにあります。実店舗におけるユーザーの識別は不可能ですが、買い物かごの一連の動きを同一ユーザーの動きと識別できることから分析の実現性が高まります。
各ポイントに置かれた受信機は、Beacon端末(買い物かご)が近づいてくるとその電波を受信し、その強度を rssi 値 ※(rssi:受信強度 (Received Signal Strength Indicator))で数値化します。ユーザーがどの受信機に近いのかは、この rssi の強さによって判定することが可能です。
この設定の元で取得できるデータからコンバージョンパステーブルを作成します。コンバージョンパスは以下の項目を持っており、来店から精算までの一連の行動をパスとみなせるものになっています。
データ項目
項目名 | 説明 | サンプル値 |
---|---|---|
beacon_id | ビーコンID = 買い物かごID | D995216353C314 |
user_id | ユーザーID | D995216353 |
node_id | 何番目のポイントか | 2 |
receiver_id | 受信機 = キャンペーン商品ID | 4 |
rssi | 受信感度 | 87 |
cv_flag | コンバージョン判別 | 0 |
time | 時間 | 1424405428 |
cv_time | コンバージョン時間 | 1424405429 |
コンバージョンパス
(図)上記のコンバージョンテーブルにある3人(上から緑、青、黄のユーザー)のユーザーのコンバージョンパスを図示したものです。実際のユーザーの動きがパスとなる所がwebのパス分析よりも面白いところですね。
こちらの場合もパスは無限の組み合わせがあるので分析は容易ではないですが、まずはできるところから分析に手を付けて膨らましていくという緩いスタンスでいきましょう。
後編に続きます。